「虫の生活」

2021年からの3年間、科学者と美術作家の交流を促すプログラム「ファンダメンタルズ·プログラム」に参加し、生物学者の冨田秀一朗氏とペアを結成し、一緒に制作した「虫の生活」というプロジェクトです。

このプロジェクトでは、「糞の展示」、「ドローイング」、「管のガラス」、「ワークショップ」が主な制作物になっています。

カイコの飼育を始めて、糞の彫刻的な形状に興味を持ったところからこの「虫の生活」が始まりました。調べていくうちに、蚕の糞が漢方として飲まれているということを知り、他の昆虫の糞はどのような味なのだろうと考え様々な糞を集めて飲んでみることにしました。実際に糞を飲みくらべてみると、苦いもの、香り高いものなど、食草と密接な関係があり、逆に、食草が同じでも昆虫が違えば風味が異なることを体感しました。

味を体験することと並行して、糞の色素にも興味を持ちました。糞をお湯で抽出した色素を見てみると、違う昆虫でも食草が同じだと近い色になりますが、紙への展開の仕方が異なります。紙の性質と、糞の性質の2つを利用しながら、ドローイングを制作しました。

以前から私は、全く違う世界に住む彼ら(生き物)のことを理解することができないという、寂しさを感じていました。その「あらがい」として自身の感覚をフル活用して、昆虫の視点を得ようとすることが、このプロジェクト「虫の生活」です。

自主企画展覧会「滞留 / STAGNATE」

https://galleryparc.com/pages/exhibition/ex_2024/2024_0824_stagnate.html

「滞留」は、美術作家の木村亜津と前川紘士、生物学者の冨田秀一郎による自主企画展です。

本企画のメンバーは、2021年からの3年間、科学者と美術作家の交流を促すプログラム「ファンダメンタルズ プログラム」に参加した際に出会い、木村と冨田、前川と冨田のそれぞれがペアを組み、個別に交流を重ねてきました。交流のペースや内容はそれぞれのペアで異なりますが、手探りのやり取りの中から少しずつ他者と共有できる/してみたいと思う断片が生まれて来ています。
展覧会タイトルの「滞留」とは、本企画を表す言葉として3者が共通して適っていると捉えた言葉です。

英語に訳した“STAGNATE”には、”停滞”や”淀み”といったネガティブな印象を与える意味もありますが、元の流れから一旦距離を取り、アイディアやイメージを漂わせることは、新たな想像や実践を育む機会にも繋がります。本展では、それぞれの交流から生まれたものを来場者と共有すると共に、通常のスピードでは流れ過ぎて行ってしまうものを一時的に留め、留まったもの同士の邂逅や新たな相互作用が生まれる事を期待しています。

会場:Gallery PARC
開催日:2024.8.24. ~ 9.15.
(主催)滞留展プロジェクトチーム、(協力)Gallery PARC、ファンダメンタルズ プログラム、(広報協力)一般社団法人HAPS、(チラシデザイン)藤本敏行、(助成)京都市「Arts Aid KYOTO」補助事業

写真: NATSUIKE Kazayu