鉄の風景 | Landscape of Iron

2022/11/18-2022/12/01

nidi gallery, Tokyo

登山が趣味である私は、

湿地帯の赤い水の上に浮かぶ油膜のような存在に長いこと心を惹かれていた。

ある時、一緒に登った友人から、これは鉄酸化バクテリアが作る膜であることを教えてもらった。

数年後、オーストラリアのBilpin という町で滞在制作する機会に恵まれ、

日々、リサーチとして藪を歩き、その道中で鉄酸化バクテリアの住処であろう、赤い水と虹色に光る膜を見かけた。

その町の一帯は砂岩が多い地層であり、砂岩が水を蓄えるスポンジの役目を果たし、岩から水が滲み出ている場所が多くある。

酸素が供給される境目であること、

大地に多くの鉄が含まれていること、水の流れが緩やかな場所が多いことが、多くの鉄酸化バクテリアを生み出しているのだと推測した。

鉄酸化バクテリアが作る膜は複雑な金属光沢があり、私はその様子を紙に写し取ることにした。

膜の上にそっと紙を置き、時間を測りながら紙をゆっくり持ち上あげる。

単純なこの作業も、その時の気温や天候、採集場所、時間よって2度と同じものを作ることはできない。

現象を保存する標本のようなものでもあり、共作のドローイングのようなものでもある。

鉄酸化バクテリアの酸化鉄を素材として扱うことを発端に、自然界での鉄の酸化還元の循環を知り、

鉄が必須因子である私たちの生命活動や、地球を取り囲む強大な磁場、相互に関係しあっている複雑さに思いを馳せることになった。

Acknowledgements

Ms. Rae Bolotin, Mr. Yuri Bolotin, Artist in residence BigCi

Mr. Shingo Kato, Microbial Materials Development Office, RIKEN Bioresource Center

Photo Yoshitake Hamanaka